国や町や会社や学校、その規模や性質は異なるけれどそれぞれの社会集団にはそれぞれの歴史と文化と伝統と風土と慣習があります。
そして一条高校にも六十数年の年月を積み重ねてきた中で、育まれ、受け継がれてきた独特の気風が存在するのであると思うところです。
もちろん人も移り変わり、時代の価値観も変化し、取り囲む状況も動き続けるので、その時々で柔軟に対応しながら、集団もまた発展し成長するものであり、時には衰退し消滅することさえあるわけです。
一条高校はどうか。第2次世界大戦後、奈良市立の唯一の公立高等学校として誕生し、現在もその立ち位置はかわらず、奈良市立でただ一校の公立高校です。
戦後の個人の自由と民主主義を標榜する新しい価値観を礎に、アメリカ合衆国を中心とする連合国の占領下のもとに開校され、その当時の建学の精神が現在に至るまで色濃く残っているのが一条高校です。
一条高校にはいわゆる校訓は存在せず、初代校長である渡邊真澄先生の開校時の言葉が、「建学の精神」として受け継がれ、今もスクールカラーに反映していることになります。
渡邊先生は、一条高校開校時の、一条丸の、その船出をコロンブスのサンタマリア号にたとえて、「フロンティア・スピリット=開拓者魂」を建学の精神として、語られました。
自分の力で自由を獲得し、その自由をまわりの人たちと共有し、新しい時代を切り開いていこうする。この歴史ある奈良の地で新しい歴史の担い手となる人間の育成を目指している。それが一条高校なのだろうと思います。
集団には物語が生まれ、物語を紡ぎだすことで人は歩み続けることが可能となります。自分の今おかれている物語のその場面を客観的に認識し、組み立てなおし新たな物語を紡ぎだすことで、ひとりの人間もまたささやかな歴史の一部となっていくのだろうとそう考えます。
おそらくホモ・サピエンスという動物は、そんな物語を生き抜いてきたのだろうし、これからも物語を生きていくのだろうと。
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