この世界をたったひとりで旅をする。

そんなことさえもはやできなくなってしまったのではないか。今、この時代。

我々の若かりし頃、同時代的には沢木耕太郎氏の深夜特急という紀行小説があった。ほぼ同時期にアジアやアフリカを旅してまわったけれど、どうもこの深夜特急に影響を受けたかのような取り扱いになってしまうところがあって、弱ったな、そうやないのにな

と思ったりしたけれど。

今は情報がゆきわたりすぎて、たった一人で情報を集めながら、まったく未知の場所を旅するということが難しくなっておるようだ。

世界はスマホの中にある。

誰かが旅した、あるいは旅している世界を自分も知らず知らずなぞってしまうような、そんな旅路。

旅をすることさえ、自由が制限されている。エアチケットも宿泊場所もすべてスマホで検索する。言語もある程度スマホが代役をやってくれそうな勢いである。

20代の頃、

タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、

スペイン、モロッコ、いろんな国を旅した。もう一度、世界への旅に出ることはあるのかな。

旅が制度化され、デジタル化され、SNS化され、手あかがついて消費されるようになったとしても

それでもたった一人で世界を旅することには今でも特別な意味があるような気がする。

見知らぬ旅人に夢よ多かれ。