30年以上も前の話である。

大学生の頃、同じ関西の大学リーグにSUNAGAWAというボクサーがいた。ヒットアンドアウェイを得意とするアウトボクシングを展開するボクサーであり、階級は俺と同じフェザー級で、とにかく圧倒的に強かった。

気が付いた時には対戦相手が膝から崩れ落ちている、そんな感じで、今どのパンチが当たったのかまるでわからないが、勝負はすでについている、という按配。

髪の毛がサラサラで、沖縄出身であったと記憶しているけれど浅黒いわけではなく、色白で極めて端正な顔つきであった。フットワークを巧みに使うボクシングスタイルもまったくクールで、しかも負け知らず、そんな選手だった。

当時、オリンピック代表候補選手だったんじゃないかと思う。

そして連戦連勝を続けていたもう一人のフェザー級の選手であるこの俺。しかしながらこのSUNAGAWAだけには勝てるというイメージがなかなか持てなかった。どうにも勝てるイメージが浮かんでこない。

おそらくSUNAGAWAの髪の毛がサラサラ過ぎて、顔つきが端正だったことも起因していたのかもしれない。あいつにどうしたら勝てるというのか。俺に勝ち目はあるのか。

勝ち進めばいつかはどこかで対戦しなければならない。ボクシングキャリアは圧倒的に向こうが上であり、その経験とテクニックと歴戦の実績は比べようもない。

しかしいつか奴を叩きのめさなければならないのだ。

いろんな事情が重なり、結局SUNAGAWAと対戦することは一度もなかった。そしてあれから30年以上の月日が流れた。もし戦っていたら完膚なきまでに・・・だったかもしれない。まあそれはわからない。

今でも時々SUNAGAWAに勝つためには何が必要か考えることがある。その攻略の方法を考える。左ストレートをフェイクにして右フック。右フックのダブルから左ボディ。

完璧なイメージを作り上げなければならんな。